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寝たきり度(障害高齢者の日常生活自立度)とは?ランクの判定基準を解説

寝たきり度(障害高齢者の日常生活自立度)は、高齢者の介護の必要性を評価するための指標の一つです。特に、日常生活をどの程度自立して行えるかを評価し、介護サービスの利用や支援が必要かどうかを判断する際に活用されます。
この記事では、寝たきり度の基本的な意味と判定基準、さらに「認知症高齢者の日常生活自立度」との違いについて詳しく解説します。また、寝たきり度の評価結果をもとに利用できる介護保険サービスや、判定時の注意点についても触れ、実際の介護の現場でどのように活用されるかをご紹介します。

寝たきり度(障害高齢者の日常生活自立度)とは

寝たきり度(障害高齢者の日常生活自立度)は、高齢者の日常生活における自立の程度を評価するための指標です。この評価基準は、高齢者が日常生活でどの程度自立して生活できるかを客観的に判断するものです。

寝たきり度は、以下のように大きく3つの区分と4つのランクに分かれています。

  • 生活自立(ランクJ)
  • 準寝たきり(ランクA)
  • 寝たきり(ランクBとC)

ランクJは、何らかの障害はあるものの、日常生活はほぼ自立しており、独力で外出できる状態を指します。ランクAは、屋内での生活は概ね自立しているが、介助なしには外出しない状態です。ランクBとCは寝たきりの状態を表し、日中もベッド上での生活が主体となる程度に応じて判定されます。

この評価基準は、高齢者の身体機能や生活状況を総合的に判断するもので、介護サービスの必要性や適切な支援方法を検討する上で重要な役割を果たしています。

寝たきり度の判定結果を活用する場面

寝たきり度の判定結果は、様々な場面で活用されています。
主に、以下のような状況で役立てられています。

1. 要介護認定の調査

介護保険サービスを利用する際の要介護認定において、寝たきり度は重要な判断材料となります。認定調査員が高齢者の状態を評価する際に、この基準を参考にします。

2. ケアプランの作成

ケアマネジャーが個別のケアプランを立てる際、寝たきり度の判定結果を基に、適切なサービスの種類や量を検討します。高齢者の自立度に応じた支援内容を計画することができます。

3. 介護サービスの提供

介護サービス事業者が、利用者に対して適切なケアを提供する際の指針となります。寝たきり度に応じて、必要な介助の程度や方法を判断することができます。

4. 医療機関での治療方針の決定

病院や診療所において、高齢患者の治療方針を決定する際の参考資料として活用されます。患者の日常生活自立度を把握することで、適切な治療やリハビリテーションの計画を立てることができます。

5. 介護予防の取り組み

地域包括支援センターなどで、高齢者の介護予防プログラムを計画する際に活用されます。寝たきり度の低い段階で適切な介入を行うことで、重度化を防ぐことができます。

このように、寝たきり度の判定結果は、高齢者の生活全般にわたる支援や介護の質の向上に貢献しています。

「認知症高齢者の日常生活自立度」との違い

「認知症高齢者の日常生活自立度」は、寝たきり度(障害高齢者の日常生活自立度)と並んで重要な評価指標ですが、両者には明確な違いがあります。

認知症高齢者の日常生活自立度は、認知症の症状による日常生活への影響度を評価するものです。この指標は、認知症の程度や症状が日常生活にどの程度支障をきたしているかを判断するために使用されます。

一方、寝たきり度は主に身体機能の低下による日常生活への影響を評価します。移動能力や日常生活動作(ADL)の自立度に焦点を当てています。

具体的な違いとして、以下の点が挙げられます。

寝たきり度(障害高齢者の日常生活自立度) 認知症高齢者の日常生活自立度
評価の対象 身体機能や移動能力を中心に評価 認知機能や行動症状を主に評価
ランク分け 主に4つのランク(J、A、B、C) 5段階(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、M)
判定基準 外出や移動の自立度、介助の必要性など 認知症の症状による生活への支障度、介護の必要性
活用場面 主に身体介護の必要性を判断する際に重視 認知症ケアの必要性を判断する際に重視

これらの違いを理解することで、高齢者の状態をより総合的に把握し、適切な介護サービスや支援を提供することができます。両指標を併用することで、身体機能と認知機能の両面から高齢者の生活自立度を評価し、個々のニーズに合わせた、きめ細かな支援が可能となります。

寝たきり度(障害高齢者の日常生活自立度)の判定基準

寝たきり度(障害高齢者の日常生活自立度)は、高齢者の日常生活における自立の程度を評価するための指標です。この評価基準は「生活自立」「準寝たきり」「寝たきり」の3つの区分に分類され、さらに4つのランクに細分化されています。

「寝たきり」の区分は、状態の程度に応じて2つのランクに分けられています。
以下に、寝たきり度の判定基準を説明します。

区分 ランク 判定基準
生活自立 ランクJ 何らかの障害等を有するが、日常生活はほぼ自立しており独力で外出する
1. 交通機関等を利用して外出する
2. 隣近所へなら外出する
準寝たきり ランクA 屋内での生活は概ね自立しているが、介助なしには外出しない
1. 介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活する
2. 外出の頻度が少なく、日中も寝たり起きたりの生活をしている
寝たきり ランクB 屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体であるが、座位を保つ
1. 車いすに移乗し、食事、排泄はベッドから離れて行う
2. 介助により車いすに移乗する
ランクC 1日中ベッド上で過ごし、排泄、食事、着替において介助を要する
1. 自力で寝返りをうつ
2. 自力では寝返りもうてない

参考:厚生労働省|障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)

寝たきり度の判定は、主に保健師やケアマネジャーなどの専門家によって行われます。評価の際は、高齢者の日常生活の様子を直接観察したり、家族や介護者から情報を得たりしながら、客観的な判断を行います。

ランクJにおける「何らかの障害」とは、必ずしも重度の障害を指すわけではありません。例えば、軽度の関節疾患や高齢による身体機能の低下、脳血管疾患の後遺症などが該当します。これらの障害があっても、日常生活をほぼ自立して送れる状態がランクJとなります。

また、補装具や自助具の使用は判定に影響しません。つまり、歩行器や杖を使用していても、それらの補助具を用いて自立した生活を送れていれば、その状態で評価されます。この点は、高齢者の実際の生活能力を適切に評価するための重要な基準となっています。

評価にあたっては、一時的な状態ではなく、概ね1週間程度の期間で最も頻繁に見られる状態を基準とします。これは、高齢者の状態が日によって変動する可能性を考慮し、より正確な評価を行うためです。

寝たきり度の判定は、介護サービスの必要性を判断する上で重要な指標となります。この基準を適切に活用することで、高齢者一人ひとりの状態に合わせた、きめ細やかな支援を提供することが可能となります。

寝たきり度の認定で利用できる介護保険サービス

寝たきり度の認定は、高齢者が必要とする介護サービスの種類や量を決定する上で重要な役割を果たします。寝たきり度が高いほど、より多くの支援が必要となり、利用できる介護保険サービスの範囲も広がります。

介護保険サービスは、高齢者の生活をサポートするために設計された多様なプログラムを提供しています。これらのサービスは、在宅での生活を継続するためのサポートから、施設での専門的なケアまで幅広く対応しています。

分類 サービス
訪問型の介護保険サービス
  • 訪問介護(ホームヘルプ)
  • 訪問入浴
  • 訪問看護
  • 訪問リハビリ
  • 夜間対応型訪問介護
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
通所型の介護保険サービス
  • 通所介護(デイサービス)
  • 通所リハビリ
  • 地域密着型通所介護
  • 療養通所介護
  • 認知症対応型通所介護
宿泊型の介護保険サービス
  • 短期入所生活介護(ショートステイ)
  • 短期入所療養介護
混合型の介護保険サービス
  • 小規模多機能型居宅介護
  • 看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)
施設入所型の介護保険サービス
  • 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
  • 介護老人保健施設(老健)
  • 介護療養型医療施設
  • 特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、軽費老人ホーム等)
  • 介護医療院
地域密着型サービス
  • 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
  • 地域密着型特定施設入居者生活介護
福祉用具の貸与・販売
  • 福祉用具貸与
  • 特定福祉用具販売

参考:厚生労働省|介護事業所・生活関連情報検索 公表されている介護サービスについて

寝たきり度が高い場合、特に訪問型のサービスが重要となります。訪問介護では、ヘルパーが自宅を訪れ、食事、入浴、排泄などの日常生活動作の介助を行います。訪問看護は、看護師が定期的に訪問し、医療的なケアや健康管理を提供します。これらのサービスにより、寝たきりの高齢者も自宅で安全に過ごすことができます。

通所型サービスは、寝たきり度が比較的軽度の場合に有効です。デイサービスやデイケアでは、日中を施設で過ごし、リハビリテーションや入浴サービスを受けることができます。これにより、身体機能の維持・改善や社会交流の機会を得ることができます。

寝たきり度が高く、24時間の介護が必要な場合は、施設入所型のサービスが検討されます。特別養護老人ホームや介護老人保健施設では、専門的な介護と医療的ケアを受けられます。これらの施設は、家族の介護負担を軽減し、高齢者に安全で快適な生活環境を提供します。

地域密着型サービスは、住み慣れた地域での生活を続けたい高齢者に適しています。小規模多機能型居宅介護では、訪問、通い、宿泊のサービスを柔軟に組み合わせて利用できます。認知症の方には、グループホームが安心できる生活の場を提供します。

福祉用具の貸与や販売サービスも、寝たきりの高齢者の生活をサポートする重要な要素です。介護ベッドや車いすなどの用具により、自宅での生活がより安全で快適になります。

これらの多様なサービスを適切に組み合わせることで、寝たきり度に応じた最適な介護環境を構築することができます。ケアマネジャーと相談しながら、個々の状況に合わせたケアプランを作成し、必要なサービスを選択することが重要です。

寝たきり度の評価における注意点

寝たきり度の評価を行う際には、いくつかの重要な注意点があります。これらの点を正しく理解することで、より適切な評価と支援が可能となります。以下に、特に注意すべき2つのポイントについて詳しく説明します。

  • 健常高齢者は対象外になる
  • 一定期間の状態で判断される場合がある

これらの注意点を踏まえることで、寝たきり度の評価をより正確に行い、適切な介護サービスの提供につなげることができます。それぞれの点について、詳しく見ていきましょう。

健常高齢者は対象外になる

寝たきり度の評価システムは、何らかの障害を有する高齢者を対象としています。そのため、健常高齢者は評価の対象外となります。健常高齢者とは、日常生活に支障をきたすような身体的・精神的な障害を持たない方々を指します。

この区分は、介護保険サービスの利用可能性と密接に関連しています。健常高齢者は、基本的に介護保険サービスを利用する対象とはなりません。しかし、これは彼らが全く支援を受けられないということではありません。

健常高齢者向けには、介護予防や生活支援のためのサービスが用意されています。例えば、地域包括支援センターが提供する介護予防教室や、自治体が実施する健康維持のためのプログラムなどがあります。これらのサービスは、将来的な要介護状態を予防し、健康的な生活を維持することを目的としています。

また、健常高齢者でも、一時的な体調不良や軽度の機能低下がある場合には、地域支援事業などを通じて必要な支援を受けることができます。これらのサービスは、介護保険とは別の枠組みで提供され、高齢者の自立した生活を支援する役割を果たしています。

一定期間の状態で判断される場合がある

寝たきり度の評価は、高齢者の日常的な状態を基準に行われますが、時として一定期間の状態を観察して判断される場合があります。これは、高齢者の状態が日によって変動する可能性を考慮するためです。

特に注意が必要なのは、パーキンソン病などの症状に波がある疾患を持つ高齢者の場合です。これらの疾患では、薬の効果や体調によって、日内変動や日ごとの変動が大きいことがあります。そのため、一時的な状態だけで評価を行うと、実際の生活状況を正確に反映しない可能性があります。

このような場合、概ね1週間程度の期間を観察し、その間で最も頻繁に見られる状態を基準に評価を行います。これにより、より正確で公平な評価が可能となります。

評価を行う際には、高齢者本人や家族、介護者からの聞き取りも重要です。日々の生活の様子や、良い時悪い時の状態について詳しく聞くことで、より実態に即した評価ができます。

また、季節による変動にも注意が必要です。夏場と冬場で活動量が異なる場合もあるため、評価を行う時期によって結果が変わる可能性があります。このような場合は、年間を通じての平均的な状態を考慮に入れることが重要です。

一定期間の観察に基づく評価は、高齢者の真の生活状況をより正確に把握し、適切な支援につなげるために重要な手法です。ただし、観察期間中に急激な状態の変化が見られた場合は、医療機関への相談や再評価の検討が必要となる場合もあります。

まとめ

寝たきり度の正しい理解と適切な評価は、高齢者の生活の質を大きく左右します。本記事で解説した判定基準や注意点を踏まえることで、高齢者一人ひとりの状態に合わせた最適な介護サービスを選択できます。また、寝たきり度の評価を定期的に行うことで、状態の変化に応じたケアプランの見直しが可能となり、より効果的な支援につながります。高齢者とその家族、そして介護に携わる専門家が協力し、寝たきり度の評価を活用することで、高齢者の自立支援と生活の質の向上を実現できるでしょう。