介護付有料老人ホームは、介護などのサービスが付いた民間の老人ホームです。
しかし、具体的なサービス内容や、入居条件、費用がいくら必要なのかよく知らない方も多いのではないでしょうか。
そこで、本記事では、老人ホームへの入居を検討している方に向けて、介護付有料老人ホームのサービス内容や、メリット・デメリット、入居までの流れなどを紹介します。
介護付有料老人ホームとは
介護付有料老人ホームは、都道府県から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けています。
有料老人ホームには、さまざまな種類がありますが、「介護付」と名乗れるのは指定を受けた施設だけです。
介護付有料老人ホームは、次の3種類に分けられます。
- 介護専用型
- 混合型
- 自立型
ここでは、それぞれの違いを把握しておきましょう。
入居条件/対象者
「介護専用型」「混合型」「自立型」の入居条件(対象者)の違いは、以下の通りです。
介護付有料老人ホームの種類 | 入居条件 |
---|---|
介護専用型 | 要介護1以上 |
混合型 | 自立、要支援1・2、要介護1~5 |
自立型 | 自立 |
サービス内容
以下は、介護付有料老人ホームで受けられる具体的なサービス内容です。なお、ここで紹介するのは、一般的なサービス内容であり、実際に受けられるサービスは施設ごとに異なります。
サービス | 内容 |
---|---|
生活支援 |
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食事 |
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介護 |
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看護 |
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リハビリ |
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レクリエーション |
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看取り |
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介護付有料老人ホームは、民間施設のため、サービス内容は施設ごとに特色があります。
提供する食事の食材にこだわった施設や、レクリエーションやリハビリに力を入れる施設、医療依存度の高い方を専門に受け入れるなどがあります。
設備
介護付有料老人ホームは、原則個室で、床面積は13㎡以上が基準です。居室に洗面化粧台やトイレ、キッチン、お風呂が付いているところもあります。
施設全体は、車いすの方でも円滑に移動できる広さに設計されています。
また、多くの介護付有料老人ホームには、食堂や浴室、リビングルームなどの共有スペースがあります。
高級な介護付有料老人ホームでは、フィットネスルームや図書館、シアタールームを備えているところも。施設で生活しながら趣味を楽しむことができます。
費用相場
多くの介護付有料老人ホームでは、「入居一時金」という初期費用と、毎月施設へ支払う月額費用が必要です。
初期費用
初期費用の入居一時金とは「家賃の前払い」のようなものです。契約時に数年分の利用料をまとめて支払い、入居年数に応じてひと月ごとに償却されます。
入居一時金の相場は0円〜数百万円までと施設によって差があります。中には、数千万円~の入居一時金が必要となる高級な施設もあります。入居一時金が多いほど、月額費用が安く済みます。
月額費用の支払額を多くする代わりに入居一時金を0円にするプランがある施設もあります。
月額費用
月額費用の内訳は以下の通りです。
- 家賃
- 管理費
- 食費
- 医療費
- 介護サービス費
- その他(日用品費、理美容代など)
有料老人ホームの月額費用の相場は、15〜30万円です。施設の設備や立地、人員配置、サービス内容の違いにより金額に差があります。立地でいえば、都市部であれば全国の相場より高くなり、地方では割安になる傾向です。
きめ細かい介護サービスを提供する施設では、国が定めた人員基準よりも、手厚い人員配置にしています。そのような施設では、「上乗せ介護費」「特別介護費」などの名称でサービス料金がかかり、月額費用がより高く高額になる傾向です。
この介護サービスについては、施設パンフレットや重要事項説明書などに記載されています。入居後に施設側とトラブルにならないためにも、月額費用は総額でいくら必要なのかしっかりと確認しておきましょう。
介護付有料老人ホームの特徴
次に、介護付有料老人ホームに入居するメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
ご本人 |
|
|
ご家族 |
|
|
メリット
介護付有料老人ホームは、24時間常駐する介護スタッフから、必要とする介護を受けられることが最大のメリットです。
施設数が多く、入居条件も幅広いので、比較的入居しやすい施設と言えます。二人部屋のある施設では、要介護度が別々の夫婦が一緒に入居することも可能です。
入居した後に要介護度が高くなっても、施設で介護サービスが受けられるので、家族が次の施設を探す必要がありません。
また、少なくとも看護師が日中に常駐しているので、持病のある方や、日常的に医療ケアが必要な方でも安心して入居できます。
介護付有料老人ホームでは、レクリエーションや共有スペースが充実しているので、入居者同士が交流する機会が多くあることもメリットです。
家族以外の人とのふれあいは、新たな趣味の発見や認知機能の改善など、さまざまな効果が期待できます。
デメリット
一方でデメリットもあります。介護付有料老人ホームでは、集団生活となるため、食事や入浴の時間など、おおまかな1日のスケジュールが決められています。また、外出・外泊する場合には、施設の許可が必要です。
そのため、自由度の高い生活を送りたいと思う方にとっては、施設での生活に窮屈さを感じるかもしれません。また、長く家族と暮らしていた方は、家族と離れることに疎外感や寂しさを感じる人もいるでしょう。
さらに、ご家族にとっては、まとまった入居一時金の準備や、毎月10万円単位の月額費用の支払いなど、費用面での負担が大きいと感じる方もいるようです。
入居までの流れ
次に、介護付有料老人ホームに入居するまでの流れを確認しておきましょう。
STEP.1 希望施設を見つける
希望の施設を見つけるには、まずは入居するご本人や家族で話し合い、希望する条件を整理しましょう。
整理するべき事項として、以下を参考にしてください。
- 利用料・予算
- 立地・アクセス
- レクリエーション・イベントの内容や頻度
- 食事内容
- 共有スペースの充実度
- 部屋の広さ・タイプ
- 医療体制
- 医療ケア
- 認知症ケア
- 看取りの対応
入居するご本人の生活状況や心身の状況などを考慮して整理していくことが大切です。
STEP.2 見学と体験入居をする
希望の施設をピックアップしたら、見学の予約を入れて、ご本人も一緒に施設見学に行ってみましょう。
入居してから「施設に馴染めない」「想像していた生活と違う!」ということにならないためにも、入居前の施設見学は必須です。いくつかの施設を見学し、比較して決めることをおすすめします。
見学では、次の点を確認してください。
- 施設、スタッフの雰囲気
- スタッフの身だしなみ・言葉遣い
- 家族が通いやすい立地にあるか
- 設備の充実度
- 部屋の広さ・明るさ
- 食事メニューは豊富で、口に合うか
施設によっては、契約前に数日〜数週間の体験入居ができる場合もあります。その施設に入居するかどうかの最終的な判断として利用することをおすすめします。
STEP.3 契約して入居する
施設見学と体験入居を経て、入居する施設が決定したら、必要書類を提出して、契約・入居へと進みます。
また、契約前には施設側との面談が行われます。面談で施設側から聞かれる内容は、健康状態や身体状況、経済状況、施設への要望などです。
面談のあとには、入居審査が行われ、審査に通ったら施設と契約を結びます。
なお、入居審査に落ちた場合は、入居を断られる可能性があります。
契約後は、施設側と相談して、正式に入居する日を決めましょう。
介護付有料老人ホームと他の民間施設との違い
次に、介護付有料老人ホームと民間の老人ホームとの違いを見ていきましょう。
介護施設・老人ホームの種類 | 特徴 | 入居条件 | 看取りケア | 終身利用 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
自立 | 要支援 | 要介護 | 認知症 | |||||
民間施設 | 介護付有料老人ホーム |
|
○ | ○ | ○ | ○ | △ | ○ |
住宅型有料老人ホーム |
|
○ | ○ | △ | △ | △ | ○ | |
健康型有料老人ホーム |
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○ | × | × | × | × | △ | |
サービス付き高齢者向け住宅 |
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○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | |
グループホーム |
|
× | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
シニア向け分譲マンション |
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○ | △ | × | × | × | ○ |
住宅型有料老人ホームとの違い
住宅型有料老人ホームは、介護がさほど必要ない自立〜介護度の低い入居者が多い施設です。
介護付有料老人ホームとの違いは、施設内で介護サービスの提供がないこと。介護が必要になったら、外部の介護サービス事業者と個別に契約して、介護サービスを利用することになります。訪問介護やデイサービスなど、ご自身に必要なサービスを自由に選んで利用できます。
そのため、介護サービス費はサービスを使った分だけ支払うことになるため、さほど介護が必要ない方の場合は、月額費用を抑えることができます。
一方で、介護付有料老人ホームでは、施設で介護サービスを受けるため、介護サービス費用は介護保険による定額です。また、外部のサービスを利用する場合は、介護保険は適用されず自費になるため注意が必要です。
健康型有料老人ホームとの違い
健康型有料老人ホームは、健康で自立した方向けの有料老人ホームです。そのため、施設で提供されるサービスは、食事や身の回りの生活援助のみです。介護が必要になった場合は、施設内で介護サービスを受けられないため、転居の必要が出てきます。
一方で、自立〜要介護5の方が対象の介護付有料老人ホームであれば、介護の必要がない「自立」で入居した方が、将来的に要介護状態になっても、施設の介護サービスを受けながら生活を続けられます。転居の必要がなく、同じ生活環境で最期まで過ごせるため、ご本人も家族も安心できます。
サービス付き高齢者向け住宅との違い
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは、バリアフリー完備の高齢者向けの賃貸住宅です。
介護付有料老人ホームとの違いは、初期費用が比較的安いことです。介護付有料老人ホームの初期費用の相場が0円〜数百万円までに対し、サ高住の相場は、0〜30万円と入居しやすいのが特徴です。
また、介護付有料老人ホームでは、24時間施設スタッフが常駐しますが、サ高住では夜間は手薄になる施設もあります。そのような施設では、夜間に何かあった場合は、緊急通報システムでオペレーターにつないで対応しています。
24時間体制で見守りが必要な方は、介護付有料老人ホームを選択する方が安心です。
グループホームとの違い
介護付有料老人ホームとの違いは、入居対象です。グループホームは認知症の人を対象としているため、入居するには、医師による認知症の診断を受けていることが条件です。さらに、グループホームは介護保険の地域密着型サービスに属しているため、入居できるのは原則として施設と同じ市区町村に住んでいる人に限定されます。
生活環境にも違いがあります。介護付有料老人ホームでは、集団生活を送りますが、グループホームでは、5〜9人の少人数で、専門スタッフの支援を受けながら共同生活を送ります。
シニア向け分譲マンションとの違い
シニア向け分譲マンションとは、バリアフリー化された分譲マンションのことです。
自立している方が対象で、受けられるサービスは安否確認などの生活支援サービスです。介護サービスは提供されないため、介護が必要となれば、外部の介護サービス事業者を利用することになります。
介護が重度化すると住み続けることが難しくなるため、他の介護施設へ転居する必要が出てきます。
介護付有料老人ホームとの大きな違いは、所有権を得られることです。マンションを購入するため、自分の資産になります。一方、介護付有料老人ホームは「利用権方式」のため、資産として残すことができません。
まとめ
介護付有料老人ホームは、24時間体制で手厚い介護が受けられるのが特徴です。
民間経営のため、料金やサービス内容、設備の充実度は、施設によってさまざまです。
介護付有料老人ホームを選ぶ際には、実際に施設見学や体験入居を行い、施設の雰囲気などもしっかりと確認した上で選ぶようにしましょう。
住まいる介護ナビでは、介護や老人ホームなどに関するお役立ち情報を定期的に発信していきます。ぜひ住まいる介護ナビを利用して頂き、希望条件にあった施設探しをしていきましょう。