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古き良き昭和にタイムトラベルできる「旅館 鳳明館」

文京区本郷には、昭和の風情を色濃く残している「旅館 鳳鳴館」があります。

国の登録有形文化財に指定されている本館のほかに、台町別館(東京都選定歴史的建造物)と森川別館があり、森川別館だけは少し離れた場所に位置しています。

※大規模改修により提供は日帰りプランのみ(台町別館は設備改修工事のため閉館中)/2024年12月現在

明治期に下宿屋から旅館に模様替え

鳳明館は、1898(明治31)年に下宿として建てられた建築物で、創業時から旅館として存在していたわけではありません。

当時の本郷は、東京最大の下宿屋街。

明治前期、東京大学をはじめとした多くの学校が創設されたことで、学生相手の下宿屋が次々と開業し、周辺エリアには数百軒に及ぶ下宿屋が密集していたそうです。

創業者は、岐阜県西美濃から上京した丹羽源作。

その後、同郷の小池英夫が同館を買い取り、1936(昭和11)年に下宿兼旅館としての営業をスタートさせています。

さらに、戦後には旅館専業にするための改築が行われ、旅館建築へと模様替えしました。

その後、当初は住宅として建てられた台町別館も旅館として改修・増築を重ねて開業し、修学旅行全盛期の昭和30年代には、団体旅館として森川別館が建築されています。

館によって異なる最寄駅

鳳明館の本館と台町別館は、地下鉄の春日駅から歩いて5分ほどの場所に位置しており、都営三田線と大江戸線の利用が可能です。

周辺には樋口一葉、宮沢賢治、坪内逍遥の旧居跡や、樋口一葉が生活に困った際にたびたび通ったとされる「旧伊勢屋質屋」など、文豪ゆかりのスポットが数多く存在しています。

比較的緩やかな「菊坂」から「胸突坂」に入り、途中「く」の字にカーブした急勾配の坂道を曲がると、目に入るのが坂上にある本館のレトロな看板文字。

同じ道沿いの隣には台町別館があり、本館と台町別館の間には「梨木坂(別名:梨坂)」の坂上となる小道が挟まれています。

森川別館だけは本館と台町別館から少し離れた場所にあり、東京メトロ南北線の東大前駅が最寄駅(徒歩約5分)となっています。

廃業の危機を救った地域の力

本郷の旅館や下宿の大半が姿を消す中、現在も営業を続けている鳳明館ですが、コロナ禍によって一時は廃業の危機に直面しました。

修学旅行生などの団体客がゼロとなり、生き残りのためにテレワークプランや文豪気分が味わえるプランなどを設定するも、2021(令和3)年5月に休業。

この時点で廃業がほぼ決まっており、取り壊し後の土地をマンションに転用するプランも立てられていたそうです。

この決定を直前で覆したのが、若手建築家による有志団体「文京建築会ユース」のメンバーたち。

彼らの尽力によって、休業翌年の4月に事業継承するためのM&Aが成立し、本郷にある総合建設会社「松下産業」が新しい経営者となりました。

鳳明館の歴史は、存続を願う地元の人々の想いとともに刻み続けているのです。