文京区千駄木にある「旧安田楠雄邸庭園」は、庭園と建築を含めた敷地全体に対して文化財指定がされている東京都指定名勝です。
近代和風建築の邸宅部分は創建当時の姿のまま奇跡的に残っており(台所のみ昭和初期に改造)、大正・昭和期の生活の様子がうかがえます。
庭園は邸宅内からの眺めを重視してつくられているため、各部屋から臨める庭園の景色にはそれぞれ違った趣があり、枝垂れ桜や紅葉も楽しむことができます。
震災や戦争の被災を免れた歴史的建築
旧安田楠雄邸庭園は、「豊島園」(のちの「としまえん」:2020年閉園)の創始者である実業家の藤田好三郎によって1919(大正8)年につくられました。
その後、旧安田財閥の創始者・安田善次郎の女婿が買い取り、1937(昭和12)年に長男であった安田楠雄が相続。
1995(平成7)年に楠雄氏が亡くなった後は、遺族によって公益財団法人日本ナショナルトラストに寄贈され、建物と庭園の維持管理が行われています。
東京都の名勝に指定されたのは1998(平成10)年のことで、建物の本格的な修復工事が着手された後、2007(平成19)年から一般公開が開始。
邸宅は関東大震災や第二次世界大戦の被災を免れており、枯山水の石組みやカシワなどの大樹が茂った屋敷の環境とあわせて、ほぼ変わらぬ創建時の姿を今に伝えています。
千駄木駅から徒歩約7分
旧安田楠雄邸庭園は、千駄木駅(東京メトロ千代田線)から徒歩7分の場所にあります。
JRや京成電鉄の日暮里駅から向かう場合は、昔懐かしい商店が立ち並ぶ「谷中銀座商店街(谷中ぎんざ)」を散策しながら15分ほどでアクセスできます。
千駄木といえば下町のイメージが強いですが、旧安田楠雄邸庭園があるのは、かつて学者、実業家、文化人などの大邸宅が多く存在していた屋敷町であり、いわば山の手エリア。
現在も立派な住宅が立ち並ぶ、閑静な通りに面しています。
文京区を走るコミュニティバス「B-ぐる」を利用すると、わずか徒歩1分の場所にバス停「特養ホーム千駄木の郷」があるので、楽に移動ができて便利です。
歴史と文化と人情が織りなす千駄木エリア
千駄木界隈には昭和レトロの雰囲気が色濃く残っていることで知られており、隣接する同区の根津や台東区の谷中とともに「谷根千(やねせん)」という愛称で親しまれています。
根津神社や谷中銀座商店街などの人気の観光スポットにも近いものの、全体的に閑静な住宅街が広がっているため安心して暮らせる環境です。
駅の近くにある「須藤公園」には約10メートルもの高さを誇る滝があり、住宅地の中にある公園とは思えないほど風情豊か。
旧安田楠雄邸庭園の近くには高村光太郎の旧居跡や森鷗外記念館、江戸川乱歩の小説「D坂の殺人事件」に登場する「団子坂」などもあり、文豪ゆかりの場所にアクセスしやすいといった点も千駄木エリアの特徴です。