文京区後楽にある「小石川後楽園」は、徳川御三家の一つである水戸徳川家の上屋敷につくられた庭園です。
現存している最古の江戸の大名庭園であり、文化財保護法によって国の特別史跡と特別名勝の両方に指定されています。
都市型総合エンターテインメント地区の「東京ドームシティ」に隣接していながら、緑あふれる園内は驚くほど静かな空間となっており、その静寂さが一層際立っています。
大名庭園の先駆けとなった名園
小石川後楽園は、江戸時代初期の1629年、水戸家の祖である徳川頼房が造成に着手し、二代藩主の光圀(水戸黄門)の代に完成した回遊式築山泉水庭園です。
庭造りを引き継いだ光圀は、明の遺臣で儒学者の「朱舜水(しゅしゅんすい)」の意見を取り入れて、中国趣味豊かな手法を加味しました。
そのため、園内には和漢の景勝地が巧みに配されています。
後楽園の名も朱舜水の命名によるものであり、「小石川」が冠されたのは大正12(1923)年のことで、「岡山後楽園」と区別するだったそうです。
池(大泉水)を中心とした回遊式の庭園形式は、後につくられる大名庭園に大きな影響を与えており、江戸の大名庭園の先駆けとなりました。
昭和27(1952)年に国の特別史跡と特別名勝に指定されていますが、都内でこの重複指定を受けているのは旧浜離宮庭園と小石川後楽園のみとなっています。
さまざまな路線が使える大都会のオアシス
小石川後楽園への入口門には、東門と西門があります。
東門へは、JR中央・総武線(各駅停車)の水道橋駅から歩いて約5分。
都営三田線の水道橋駅や、東京メトロ丸ノ内線や南北線の後楽園駅からは、徒歩約8分でアクセスできます。
東門は東京ドームシティの敷地に隣接しているのが特徴で、同じエリア内で簡単に東京の喧騒から江戸の静寂へと行き来することができます。
一方、西門への最寄駅は、飯田橋駅。
都営大江戸線の飯田橋駅からだと徒歩3分ほどですが、JR中央・総武線(各駅停車)や東京メトロの東西線、有楽町線、南北線の飯田橋駅からだと8分程度かかります。
西門を入ると、庭園への入り口の左手に「涵徳亭(かんとくてい)」があります。
享保年間に朱子学者の林信篤が名づけた歴史的な建物で、美しい庭園を眺めながらランチや喫茶が楽しめるだけでなく、集会施設としても利用が可能です。
さまざまな東京の表情が凝縮されたエリア
小石川後楽園の西門側から庭園に入ると、空高くそびえ立つ東京ドームホテルや文京シビックセンターが視界に入ることに驚かされます。
よく見ると、東京ドームの屋根(ドーム部分)も同じ景色の中にあり、江戸時代の庭園にタイムスリップしながらも、都会の中心にいることが実感できます。
小石川後楽園の周辺エリアは、文京区の行政の中枢でもあります。
文京シビックセンターには区役所などの区民施設が入っており、職員食堂は職員や区民でなくても利用可能。
さらに、25階の展望ラウンジも無料開放されており、地上約105メートルの高さから東京スカイツリーや新宿副都心の高層ビルはもちろん、天気が良ければ富士山も眺めることができるでしょう。